「国という安定した基盤で、スケールの大きな仕事がしたい」。そう考える社会人にとって、国家公務員は今、非常に有力な選択肢です。
かつての「新卒・エリート」偏重は変わり、現在は多様なバックグラウンドを持つ民間経験者を積極的に採用する時代へとシフトしています。
この記事では、多くの合格者を送り出してきた予備校講師が、社会人が国家公務員へ転職するための仕組みと合格戦略を徹底解説します。
この記事を書いた人

公務員のライト専任講師
よこみぞ先生(横溝涼)
- 1 そもそも「国家公務員」ってどんな仕事?
- 2 勤務先と役割の違い
- 3 国家公務員の種類と選び方
- 4 総合職
- 5 一般職(事務・技術・農業など)
- 6 国家専門職(国税専門官・労働基準監督官など)
- 7 社会人が受験できる「2つの採用ルート」
- 8 一般職試験(大卒程度)
- 9 経験者採用試験(係長級・係員級)
- 10 試験の仕組みと難易度(一般職・経験者採用の比較)
- 11 合格までのスケジュール感
- 12 大卒区分(春試験)の場合
- 13 経験者採用(秋試験)の場合
- 14 社会人が合格するための「3つの壁」と攻略法
- 15 「筆記試験(数的処理)」の壁
- 16 「論文・面接」の壁
- 17 「官庁訪問」の壁
- 18 社会人のための「最短ルート」戦略
- 19 Step 1:自分の適性ルートを見極める
- 20 Step 2:時間の使い方を「朝型」に変える
- 21 Step 3:プロの手を借りる
- 22 まとめ
そもそも「国家公務員」ってどんな仕事?

地方公務員が「地域住民の生活」を支えるのに対し、国家公務員は「日本という国全体の仕組み」を支える仕事です。
勤務先と役割の違い
国家公務員の仕事は、大きく分けて2つのフィールドがあります。
本省庁(霞が関)
- 役割:法律の立案、予算の編成、国会対応、政策の企画立案など。
- 特徴:国の舵取りを行う司令塔です。ニュースで見るような大規模なプロジェクトに関わることができます。
出先機関(地方支部局)
- 役割:労働局、税務署、法務局、地方整備局など、各省庁の出先機関で働きます。
- 特徴:本省が決めた政策を現場で実行する役割です。国家公務員でもこの「出先機関」で働いており、地域限定で働ける場合もあります。
国家公務員の種類と選び方

「国家公務員」と一口に言っても、職種によって仕事内容や難易度が大きく異なります。社会人が現実的に目指せる主な職種を整理しましょう。
総合職
政策の企画立案を行う幹部候補でいわゆるキャリア官僚です。
- 特徴:全国転勤も多いですが、国を動かす大きな権限を持ちます。
- 難易度:非常に高く、試験対策に膨大な時間が必要です。社会人からの転職難易度は最も高いと言えます。
一般職(事務・技術・農業など)
政策の実行・運用を担う実務のスペシャリストです。
- 特徴:本省や出先機関で、特定の分野に腰を据えて働きます。
- 魅力:ワークライフバランスが比較的整っており、地域限定での採用もあるため、多くの社会人にとっての第一志望(メインのターゲット)となります。
国家専門職(国税専門官・労働基準監督官など)
特定の分野で高い専門性を発揮するプロフェッショナル職です。
主な職種
- 国税専門官:税務署等で税務調査や指導を行います。
- 労働基準監督官:企業の労働環境を監督し、労働者を守ります。
- 財務専門官:財務局等で財政や金融のプロとして働きます。
特徴
独自の試験が実施されます。「専門職」という名前ですが、未経験から研修で育成するシステムが整っており、実は文系・理系問わず受験可能です。
注意点
多くの試験種で「30歳未満」などの年齢制限があるため、20代の社会人にとって非常に狙い目のルートです。

20代の社会人の方は、国家一般職と国家専門職を併願して受験される方が多く王道の受験パターンとなります。
社会人が受験できる「2つの採用ルート」

国家公務員への入り口は一つではありません。ご自身の年齢やキャリアに合わせて、最適なルートを選ぶことが合格への第一歩です。
一般職試験(大卒程度)
主に20代の社会人にとっての王道ルートです。
- 対象:30歳になる年度まで。
- 特徴:新卒と同じ試験を受けます。筆記試験の配点が高く、公平に実力が評価されます。
- メリット:採用数が最も多く、ポテンシャルで採用されるため、未経験の分野にも挑戦しやすいです。
- 補足:前述の「国家専門職」も、年齢要件を満たせばこの「大卒程度」の枠組みで受験可能です。
経験者採用試験(係長級・係員級)
主に30代以降や、ある程度の職務経験がある方向けのルートです。職種によって、採用時の役職(級)が異なる傾向があります。
- 行政職(事務):一般的に「係長級」としての採用となります。即戦力として、組織のマネジメントや企画の中核を担うことが期待されます。
- 技術職(土木・デジタル等):「係員級」からスタートする場合も多くあります。専門的なスキルを持つ若手〜中堅層が、現場の実務担当者として採用されるケースです。
- 対象:民間企業等での職務経験がある方(試験区分により2年〜5年以上など)
- 特徴:筆記試験は基礎能力試験と経験論文のみで、専門試験(法律など)がないケースが多いです。その分、面接と論文で「経験をどう活かせるか」が問われます。
- メリット:法律などの専門知識が不要で、働きながら対策しやすいです。

行政職は採用数も考えると大卒程度で受験するのがベターです。行政職の経験者採用だと、マネジメント経験が必須の係長級からの募集ですので、注意しましょう。
試験の仕組みと難易度(一般職・経験者採用の比較)
ここでは、試験勉強が必要となる「①一般職」と「②経験者採用」の試験内容を比較します。
| 試験種目 | ① 大卒程度 | ② 経験者採用(係長級・係員級) |
| 主な対象 | 20代 | 30代 |
| 時期 | 春(一次試験は6月頃) | 秋(一次試験は10月頃) |
| 基礎能力試験 | 30題(知能+知識) | 30題(知能+知識) |
| 専門試験 | あり(8科目選択・択一) ※教養のみの区分もあり | なし(※区分による) |
| 論文試験 | 一般論文 | 経験論文 |
| 合格に必要なもの | 一定の勉強時間 | 職務経験のアピール |
20代の方:勉強時間を確保できるなら、採用枠の広い「大卒程度」がおすすめ。
30代以上の方:専門試験の負担がない「経験者採用」のみとなります。ただし倍率は高くなる傾向があります。

大卒程度の試験は、専門試験がない教養区分という試験も出てきています。受験する際には、どのような受験方法があるか確認しましょう。
合格までのスケジュール感

国家公務員の試験は、20代向けの大卒区分は春に、30代以降の経験者採用は秋に試験という風に考えて下さい。
大卒区分(春試験)の場合
| 3~4月 | 申込 |
| 6月 | 一次試験(筆記・論文) |
| 7~8月 | 二次試験(面接)・官庁訪問 |
| 10月以降 | 採用(既卒者は年度途中採用の可能性もあり) |
経験者採用(秋試験)の場合
| 7〜8月 | 申込 |
| 10月 | 一次試験(筆記・論文) |
| 11月 | 二次試験(面接) |
| 12月 | 合格発表・官庁訪問 |
| 翌年4月 | 採用 |
社会人が合格するための「3つの壁」と攻略法

働きながら試験を突破するには、学生とは異なる戦略が必要です。
「筆記試験(数的処理)」の壁
どの試験区分でも避けて通れないのが、数学的なパズル問題である「数的処理」です。
【攻略法】
満点を目指さないことが鉄則です。国家公務員試験には基準点(足切り)がありますが、全体の3〜4割程度です。頻出パターン(仕事算、損益算など)だけをマスターし、難問は捨てる勇気を持ちましょう。1日1問でも解き続ける「継続」がカギです。
「論文・面接」の壁
特に経験者採用では、「経験論文」の出来が合否を分けます。
【攻略法】
「民間での実績」をただ並べるだけでは不十分です。「その経験で培った能力を、具体的にどの政策・業務に活かせるか」まで落とし込んで書く必要があります。志望省庁の業務内容や課題を把握し、相手のニーズ(課題)に自分のスキルをフィットさせる「提案型」の面接や論理的な論文を目指しましょう。
「官庁訪問」の壁
筆記に受かっても、各省庁での採用面接(官庁訪問)で内定が出なければ採用されません。
【攻略法】
官庁訪問は情報戦です。筆記対策と並行して、各省庁の説明会に参加したりして、「現場のリアル」を知ることが重要です。特に社会人は「なぜ今の会社を辞めてまで?」と問われるため、ポジティブかつ論理的な転職理由を準備しておきましょう。

官庁訪問は国家一般職の試験にのみある特殊なものです。行きたい省庁ごとに改めて面接試験を受けるという感覚でいてください。
社会人のための「最短ルート」戦略

国家公務員の試験は、受験先を決めるところから対策までやることが多いです。無駄なく対策するためには次のステップを意識してみて下さい。
Step 1:自分の適性ルートを見極める
- 20代で、勉強時間を確保できる → 「一般職(大卒程度)」
- 30代以上で、マネジメント経験等がある → 「経験者採用」
まずは自分が受けられる試験を洗い出しましょう。また、受験区分や地域も合わせて決めることも必要になってきます。
Step 2:時間の使い方を「朝型」に変える
働きながらの勉強は、残業後の夜に行うのは非効率です。出勤前の1時間、通勤時間のスキマ時間を活用し、フレッシュな頭で集中する習慣をつけましょう。
Step 3:プロの手を借りる
特に「経験論文」や「面接カード」は、公務員試験独特の作法があります。予備校の単科講座や添削サービスを利用し、客観的な視点で修正してもらうことが、合格への近道です。

国家公務員試験は、複雑なため受ける試験の決定から悩む人も多いです。この段階からプロの手を借りるのも一つの手です。
まとめ
国家公務員への転職は、決して「狭き門」ではありません。
国は今、現場を知るあなたの経験を求めています。
20代であればポテンシャルで、30代以降であれば実績で。 それぞれの強みを活かせるルートが必ずあります。まずは人事院のHPで「受験案内」を確認し、第一歩を踏み出してみてください。









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