こんにちは。公務員のライト専任講師のましゅーです。
2026年8月7日に、人事院から国家公務員の給与などに関する勧告が出されました。
そこでこの記事では、初任給9,500円の引上げをはじめとする改定の中身から、採用試験の見直しまで、勧告の原文をもとに解説していきます。
この記事を書いた人

公務員のライト専任講師
ましゅー先生(望月真修)
人事院勧告の基礎知識

人事院勧告とは、民間企業の給与水準に合わせて国家公務員の給与を見直すよう、人事院が国会と内閣に対して行う申し入れのことです。
例年8月に公表され、公務員志望の方にとっては将来の給与を左右する最も重要な発表と言えます。

人事院勧告が行われる理由
国家公務員は、その地位の特殊性と職務の公共性から、ストライキなどの労働基本権が制約されています。
そのため、職員団体と交渉することはできても、民間企業のように労働協約を結んで給与を決めることができません。人事院勧告は、この制約を埋め合わせる「代償措置」として設けられた仕組みです。人事院が中立な立場で民間の給与を調べ、それに合わせるよう勧告する、という設計になっています。
勧告から給与に反映されるまでの流れ
- 人事院が民間企業約10,100事業所を対象に調査し、公務員給与と比較する
- 差額をもとに、人事院が国会と内閣に勧告を行う(2026年は8月7日)
- 内閣が勧告の取扱いを決定する
- 国会で給与法(一般職の職員の給与に関する法律)が改正される
- 改正された内容で、実際の給与に反映される
勧告はあくまで申し入れであり、そのまま自動的に給与が変わるわけではありません。国会で法律が改正されて、はじめて実際の給与に反映されます。
地方公務員の給与への影響
地方公務員の給与は、国の職員などの事情を考慮して定めることになっているため、多くの自治体が人事院勧告を参考にしています(地方公務員法第24条)。
都道府県と政令指定都市には人事委員会(自治体版の人事院にあたる組織です)が置かれ、特別区や人口15万人以上の市にも置かれている場合があります。人事委員会は毎年少なくとも1回、給料表について議会と長に報告し、あわせて勧告を行うことができるとされています(同法第26条)。

2026年勧告の全体像
人事院が示した人事制度の改革は、この4つの柱で構成されています。給与の引上げだけでなく、働き方と採用試験の見直しまで幅広く踏み込んだ内容です。

勧告・報告・意見の申出の違い
今回の発表は、「勧告」「報告」「意見の申出」の3種類で構成されています。
給与の改定と、勤務時間・休暇の改定が「勧告」で、法改正に直結する強い位置づけです。人事管理の方向性や給与の実態分析を示したものが「報告」、国家公務員災害補償法の改正を求めたものが「意見の申出」になります。
給与の改定内容

2026年4月時点で、国家公務員の月例給が民間より1人あたり平均15,056円(3.51%)低いという調査結果が出ました。
この差を埋めるため、2026年4月にさかのぼって給与を引き上げる内容になっています。さかのぼって実施するというのは、法律の改正後に差額がまとめて支給されるという意味です。
官民較差と平均改定率
※ 行政職俸給表(一)とは、本府省や出先機関で事務を担当する職員に適用される、国家公務員の基本となる給与表です。/※ 官民較差は「平均給与月額」どうしの比較です。俸給に地域手当・扶養手当・住居手当などを加えた額で、残業代と通勤手当は含みません。/※ 調査は民間約10,100事業所を対象に行われ、8,144事業所で完了しています(調査完了率82.5%)。
行政職俸給表(一)の平均改定率は3.3%で、これに毎年の定期昇給分を加えると、月収ベースで約4.9%の改善になると試算されています。
初任給の引上げ額
※ 現行額は2025年(令和7年)の人事院勧告による額です。/※ 金額は行政職俸給表(一)の俸給月額(民間でいう基本給にあたります)で、地域手当などの各種手当は含みません。
初任給は、総合職試験・一般職試験のいずれも一律9,500円の引上げです。引上げ率で見ると、もともとの額が低い高卒者区分がいちばん大きく伸びています。
1年目の給与の例(月額)
※ 勧告どおり実施された場合の、公務員のライトによる試算です。地域手当12%の地域に勤務し、住居手当を上限額(家賃6万1000円以上の場合)で受けたと想定しています。/※ 超過勤務手当は「(俸給+地域手当)×12÷(38.75×52)×1.25×15時間」で算出しました。俸給が上がると単価も上がるため、改定後は現行より増えます。/※ 通勤手当は分かりやすさを優先した概算です。実際の額は勤務地・通勤距離・残業時間によって変わります。/※ 税金と社会保険料が引かれる前の額面です。
同じ条件で比べると、1年目の月の支給額は約1万1828円の増加になります。
基本給が上がると、それに連動する地域手当・超過勤務手当・ボーナスも一緒に増えます。そのため、実際の支給額への影響は9,500円よりも大きくなります。

ボーナスの引上げ
※ 期末手当は在職期間に応じて支給される部分、勤勉手当は勤務成績に応じて支給される部分です。2つを合わせたものが、いわゆるボーナスにあたります。
民間企業のボーナスが年4.72月分だったのに対し、国家公務員は4.65月分で0.07月分下回っていました。この差を縮めるため、0.05月単位の改定ルールに沿って引き上げられます。
職務の級ごとの改定率
※ 職員のイメージは、今回の勧告の別表第5で示された役職段階(主任級以下=1・2級、係長級=3・4級、課長補佐級=5・6級)に基づく区分です。実際の職名は府省によって異なります。/※ 改定率は行政職俸給表(一)のものです。
初任給の引上げを反映して、採用直後の1級が最も高い4.0%となっています。あわせて、中堅層以上にあたる級についても2025年の改定を上回る引上げが行われます。

再任用職員の給与改善
定年前再任用短時間勤務職員などの月給についても、行政職俸給表(一)で平均8.5%という大きな改定が行われます。
民間のフルタイム再雇用者と比べたときに、公務のほうが低い水準にあったことが理由です。
年収モデル

ここまでの改定を踏まえて、年齢ごとに年収がどのくらいになるのかを見ていきます。
国家公務員の年収は、毎月の給与を12か月分に、年2回のボーナスを足したものが基本になります。

年齢別の年収モデル
※ 2026年(令和8年)の勧告どおり実施された場合の、公務員のライトによる試算です。/※ 俸給の額は人事院「国家公務員モデル給与例」の地方機関の勧告後の額を使い、そこに各種手当を加えています。50歳(課長)の額には俸給の特別調整額46,300円を含みます。/※ 地域手当は12%(3級地)、通勤手当は月1万円、超過勤務は月15時間と仮定しています。/※ 扶養手当は18歳・22歳が扶養親族なし、35歳以上が子2人(1人13,000円)と仮定しています。/※ 住居手当は18歳・22歳が借家で上限額の28,000円、35歳以上は持ち家で支給なしと仮定しています。/※ 課長は管理職のため超過勤務手当を含めていません。/※ ボーナスは年4.70月分で計算しています。役職段階別加算額・管理職加算額・勤勉手当の成績率は含めていないため、実際はこれより多くなる場合があります。
同じ条件でならすと、1年目にあたる22歳で年収は約534万円、50歳の課長では約886万円という水準になります。
年収は俸給だけで決まるわけではありません。どの地域に勤務するか、扶養する家族がいるか、持ち家か借家かで、同じ年齢でも金額はかなり変わります。

ボーナスの推移
※ 金額は管理職を除く一般行政職職員の平均支給額です(内閣人事局の公表による)。支給月数は人事院勧告によるものです。/※ 2024年度の冬は、給与法の改正が支給日に間に合わなかったため、12月の支給時点では約65.3万円でした。後日の追加支給を含めた額が約72.2万円です。/※ 2026年度の冬と年間合計は、勧告どおり実施された場合の見込みです。
ボーナスの支給月数は4年連続で引き上げられています。金額で見ると、2022年度の約123.7万円から2026年度は約152万円と、4年で28万円ほど増える見込みです。

新設・拡充される手当
転居に関する手当の新設
※ 単身赴任者には、これとは別に二重生活の生計費を補助する基礎額(年間36万円)が支給されます。
これまで転勤の負担を軽減する手当は、単身赴任手当が中心でした。今回の勧告では、単身赴任手当の加算額を組み替えるかたちで、家族で引っ越した職員も対象になる手当が新しくつくられます。

広域異動手当の引上げ
※ 広域異動手当とは、遠方への異動を行った職員に対し、俸給などに一定の割合を掛けて支給される手当です。/※ 2026年4月1日以降に受給対象となる全ての職員が対象です。/※ 地域手当が支給される地域では、広域異動手当の割合から地域手当の割合が差し引かれます。地域手当12%の地域なら、16%-12%で4%となります。
300km以上の異動では、支給割合が10%から16%へと大きく引き上げられます。転勤の距離が長いほど手当が手厚くなる仕組みです。
特地勤務手当に準ずる手当の拡大
へき地など生活が不便な場所にある官署へ転居して勤務する職員について、手当の支給対象となる官署の範囲が広がります。
これまでは近くに公共施設があると対象外でしたが、今後は周辺の生活環境にかかわらず支給対象になるよう基準が見直されます。実施は2027年(令和9年)4月の予定です。
働き方と休暇の見直し

給与だけでなく、事由を問わない年7日の無給休暇の新設をはじめ、休暇制度と働き方についても大きな見直しが盛り込まれました。
このうち休暇と勤務時間に関する見直しは、2027年(令和9年)4月からの実施が予定されています。
事由を問わない年7日の無給休暇
既存の休暇を使い切ってしまった場合の、いわば「予備の休暇」にあたる制度です。時間単位で取れば、一定期間だけ短時間勤務のような働き方もできます。
人事院が挙げている活用例は、時間単位ではいわゆる小1の壁(子どもの小学校入学に伴って仕事と育児の両立が難しくなることです)や妊娠初期・後期の体調変化、日単位では介護に至る前の親の体調変化や、災害で住居が壊れたときの対応です。

フレックスタイム制と代休日の見直し
- 1日の最短勤務時間を見直す
- 各府省の判断でコアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯です)を設定しないことも可能にする
- 休日に勤務した場合の代休日は1日に満たなくても、週休日に勤務した場合の振替等は1日または4時間に満たなくても、それぞれ指定できるようにする
これまでは、休日勤務が1日に満たないと代休日を取れませんでした。今後は働いた時間と同じだけ休めるようになります。
超過勤務の縮減とハラスメント対策
長時間労働が生じている職場への支援として、月100時間などの上限を超える超過勤務を減らすための伴走支援が行われています。この取組は2025年度に始まり、2026年度から対象の府省が広げられています。
あわせて、いわゆるカスタマー・ハラスメント(利用者や取引先からの著しい迷惑行為のことです)への対策も進められます。人事院は2026年4月に防止措置に関する規則を定めており、2026年10月の施行に向けて各府省を支援しています。
遺族補償年金の受給資格要件の撤廃
公務災害で職員が亡くなった場合の遺族補償年金について、配偶者が夫である場合にのみ課せられていた受給資格の要件が撤廃されます。
これは勧告ではなく「意見の申出」という形で示されたもので、2027年(令和9年)4月の施行が予定されています。
採用試験の見直し

受験生の皆さんに最も関わるのが、この採用試験の見直しです。最大のポイントは、CBT方式の段階的な導入になります。
CBT方式とは、会場のパソコンで受ける試験のことです。受験会場と受験日を一定の範囲で選べるようになります。

CBT方式の導入スケジュール
※ 2027年度の経験者採用試験の実施方法は、2026年度中に公表される予定です。/※ 2028年秋以降の導入は、経験者採用試験の実施状況を検証したうえで進められます。
まず2027年度の経験者採用試験に導入され、そこでの結果を検証したうえで、総合職試験へ広げていく流れです。専門試験など基礎能力試験以外の科目についても見直しが予定されています。

技術系人材の採用ルート拡大
技術系の職種では一般職試験の申込者数の減少が続き、合格者数が採用予定者数を下回る区分もあるという状況が報告されています。
そこで、特定の資格を持つ人を試験によらず係員級に採用できる範囲を広げる方向で、2026年度中に制度改正が行われます。技術系を目指している方にとっては、試験以外のルートが広がる動きです。
専門人材・アルムナイ人材の採用推進
民間の専門人材や、いったん公務を離れて戻ってくるアルムナイ人材(過去にその組織で働いていた人のことです)の採用を進める方針も示されました。
専門人材の情報を集めた「人材プール」を2026年度中に整備し、各府省と採用候補者をつなぐ仕組みがつくられます。社会人経験を活かして公務員を目指す方にとっては、入口が広がる動きです。
受験者の経済的な負担の軽減
2026年度の官庁訪問では、地方在住者の負担を軽くするため、より安価な宿泊施設の案内が行われました。
また、採用予定者が内定式などに出席するための交通費を、一定の条件のもとで支給できることが全府省に周知されています。
これから受験する方の対策方法

2026年人事院勧告のまとめ
- 官民較差は15,056円(3.51%)で、2026年4月にさかのぼって給与が引き上げられる
- 初任給は総合職・一般職ともに9,500円の引上げで、一般職(大卒程度)は241,500円になる
- ボーナスは年4.65月分から4.70月分へ、0.05月分の引上げ
- 転居を伴う転勤への手当が新設され、広域異動手当の支給割合も引き上げられる
- 事由を問わない年7日の無給休暇が新設される(2027年〈令和9年〉4月から)
- CBT方式が2027年度の経験者採用試験に導入され、2028年秋の総合職試験(教養区分)、2029年春の全区分へと広げることが目指されている
2026年の勧告は、民間企業の賃上げを反映して2025年に並ぶ高水準の引上げとなりました。給与だけでなく、働き方と採用試験の両方に踏み込んだ内容です。
公務員を目指す皆さんにとっては、待遇面の追い風が続いていると言えます。



どんな些細なことでも構いませんので、公務員試験や講座のことで、気になることがあれば、お気軽にご相談ください!
※ 出典:人事院「令和8年人事院勧告」(2026年8月7日)/人事院「人事院総裁談話」(2026年8月7日)/人事院「令和8年 人事院勧告・報告の概要」(2026年8月7日)/人事院「令和7年人事院勧告・報告の概要」(2025年8月・現行の初任給額)/一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)/一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号)/人事院規則九―九七/地方公務員法(昭和25年法律第261号)。「1年目の給与の例」は上記法令に基づく公務員のライトの試算です。














