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公務員のカスハラは民間の3倍超|2026年対策義務化と自治体の動向を解説

公務員のカスハラ

こんにちは、ましゅーです。

「お前ら税金で食ってるんだろ」──そんな言葉が、いま全国の役所で日常的に飛び交っています。公務員のカスハラ被害は民間の3倍超となっており、どの職員も無関係とは言えない高水準です。

そのような中で、2026年10月、改正労働施策総合推進法でカスハラ対策がついに全事業主の義務となります。この記事では、データで実態を押さえつつ、法改正と自治体の動向をまるごと解説していきます。

この記事を書いた人

公務員のライト専任講師

ましゅー先生(望月真修)

  • 膨大な試験データを元に出題傾向・ボーダー予想を行う

公務員のカスハラとは|定義と「正当なクレーム」との違い

カスタマーハラスメントとは

まずはカスハラの法的定義と「正当なクレーム」の線引きを押さえます。

改正労働施策総合推進法が定めるカスハラの3要件

カスハラの3つの要件

厚労省の資料では、カスハラは次の3要件すべてを満たすものと定義されています。

①顧客や取引先など、事業主の事業に関係する者の言動

公務員の場合は住民・申請者・利用者など、行政サービスを受ける側の言動が該当します。

②業務の性質に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの

一般的なクレームの範囲を超え、人格否定・脅迫・長時間拘束など、度を越した行為を指します。

③労働者の就業環境を害するもの

職員の精神的苦痛・業務遅延・離職など、職場環境に実害が及んでいるかが判断基準となります。

鍵は「社会通念上許容される範囲を超える」かどうかです。人格否定や暴力的な言動になった時点でカスハラに該当します。

正当なクレームとカスハラの境界線

クレームとカスハラの違い

正当なクレームは、商品・サービスの欠陥や対応の誤りに対する具体的な改善要求で、職員が冷静に応答できる範囲内に収まります。

一方のカスハラは、人格否定・暴言・長時間拘束・脅迫・土下座要求など、要求の中身ではなくやり方そのもので線が引かれます。「お前が無能だから進まない」と1時間怒鳴り続ける行為が典型例です。

要求が正しくても、手段が常識を超えればカスハラと判断されます。

公務員のカスハラ被害は民間の3倍超|データが示す深刻な実態

公務員のカスハラの被害率

公務員のカスハラ被害は、民間と比べて著しく高い水準にあります。被害経験率・行為の中身・職種別の3つの角度から実態を確認します。

過去3年で被害経験率35%

JILPTの調査によると、過去3年でカスハラを受けた経験がある自治体職員は35.0%です。

一方で民間労働者のカスハラ経験率は、厚労省調査で10%程度とされています。公務員は民間の3倍以上に達し、「公務員=安定」のイメージとは現場感覚が大きくかけ離れています。

暴言・長時間居座り・金品要求が上位

カスハラの代表例

地方公務員がよく受けるカスハラの中身は次のとおりです。

暴言・説教

人格否定・罵倒・大声での叱責など、職員を精神的に追い詰める言動です。

長時間の居座り

窓口を占拠して何時間も帰らず、本来の業務を麻痺させる行為です。

同じクレームの繰り返し

解決済みの案件を蒸し返し、電話や来庁で職員の時間を奪い続けるパターンです。

暴力行為

胸ぐらを掴む・物を投げつけるなど、身体や物品への直接的な攻撃です。

金品の要求

慰謝料・商品券などを脅迫的に求める行為で、刑法の強要罪にも該当しえます。

特定住民による繰り返しが約9割を占めるのが特徴で、「窓口に12時間居座られた」「深夜まで暴言を浴び続けた」といった事例も報告されています。
業務上、住民と直接対面で交渉する職種ほどカスハラ被害とメンタル負荷が大きくなります。

→部署ごとの忙しさとメンタル負荷についてはこちら

公務員はなぜカスハラを受けやすいのか|3つの構造要因

カスハラを受けやすい3つの理由

なぜ公務員はこれほどカスハラを受けやすいのか。背景には3つの構造要因があり、個人の能力ではなく職業の仕組みそのものに原因があります。

「全体の奉仕者」という法的位置づけ

公務員は憲法15条で「全体の奉仕者」と規定され、地方公務員法30条も「住民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務」する義務を課しています。

この位置づけは、住民から「自分のために動いて当然」という強い前提を生みます。冒頭の「税金で食ってる」も、この構造から出てくる言葉です。

民間のように「お客様を選ぶ」発想が成立しないのが、公務員のカスハラ問題の出発点です。

窓口対応の特性(独占的・断れない・代替不可)

窓口対応の特性

公務員の窓口業務には、民間と違って3つの「断れない」性質があります。

独占的

住民票・税金・福祉など行政にしか扱えないサービスが多く、住民は他社で代替できません。

代替不可

民間のように「他社へどうぞ」と切り出せず、住民は窓口に居続けるしかありません。

拒否権がない

正当な申請であれば対応する義務があり、相手を選んで断ることは原則できません。

この3点が揃うと、住民は「ここで決着をつけるしかない」と腰を据えてしまいます。民間のコールセンターと違い、行政窓口は対応中止を簡単に判断できず、これが長時間居座りの温床になっています。

行政情報の公開性(職員氏名・組織図・連絡先)

行政職員の情報は、昔から住民への透明性確保のために公開されてきました。名札のフルネーム表記、組織図上の担当者氏名、内線一覧などは長らく当然のものとされていました。

しかしこの公開性が、SNS時代には個人攻撃の入口になっています。職員氏名でネット検索され、家族構成まで晒されるケースも出ています。

民間企業でここまで個人情報を晒すことは少なく、公務員特有の脆弱性です。

最近は「名札を姓のみに変える」「ひらがな表記にする」自治体が一気に増えています。個人の自己防衛任せから、「組織で守る」時代へ確実に変わっていきます。

【2026年10月施行】改正労働施策総合推進法でカスハラ対策が義務化

改正労働施策総合推進法

2026年10月、カスハラ対策はついに事業主の法的義務となります。改正労働施策総合推進法のポイントを整理します。

全事業主に課される雇用管理上の措置義務

改正労働施策総合推進法は2025年6月に公布され、2026年10月1日に施行されます。

この改正で、カスハラ対策が全事業主の「雇用管理上の措置義務」となります。労働者を1人でも雇用している事業者は、カスハラ対策を講じなくてはなりません。

これは公務員も同様で、全省庁・自治体が対策を講じる法的義務を負います。「うちは民間ではないから関係ない」は通用しません。

事業主が講ずべき4つの措置

事業主が講ずべき4つの措置

厚労省の指針では、事業主が取るべき措置が次の4つに整理されています。

①方針の明確化と周知

カスハラに毅然と対応する旨を、社内規程や住民向け掲示などで明文化することが第一歩です。

②相談窓口の整備

被害を受けた職員がすぐに相談・通報できる窓口を設け、対応担当者まで明確化します。

③迅速・適切な対応体制

カスハラ発生時の初動・引き継ぎ・記録のフローを定め、組織として一貫した対応を行います。

④プライバシー保護と不利益取扱い禁止

相談者の情報を守り、相談したことで人事評価などで不利益を受けない運用ルールを敷きます。

規模にかかわらず、すべての事業主が対応する必要があります。

違反時のペナルティ(指導・勧告・公表)

違反時のペナルティ

改正労働施策総合推進法には、対策義務違反に対する直接的な刑事罰はありません。しかし違反が認められた場合、次のようなペナルティが課されます。

①報告徴求

厚生労働大臣が、事業主に対策の実施状況を報告するよう求める最初の段階です。

②助言・指導・勧告

報告内容に問題があれば、改善に向けて段階的な行政指導が行われます。

③事業所名の公表

勧告にも従わない悪質なケースでは、組織名が公表され社会的信用を一気に失います。

「公表」は行政組織にとって最大級のダメージです。住民からの信頼が大きく損なわれるため、形だけでは済みません。

法律で義務化されたとはいえ、対策の進度は組織によって大きく違います。先進的な自治体は国の法律施行を待たずに独自の条例で対策を進めているので、自分の自治体の対応状況も日頃からチェックしておきたいところです。

各省庁・自治体のカスハラ対策動向

国や自治体のカスハラ対策

先進的な省庁・自治体は独自のカスハラ対策を進めています。国・都道府県・市町村の3段階で動向を整理します。

厚労省の指針と業種別マニュアル

厚労省は法施行に向けて指針を公表しました。これが事実上のガイドラインとなります。

加えて、業種別のカスハラ対策マニュアルも順次公開しています。自治体職員向けでは総務省の資料自治労の資料でマニュアルが公開されています。

全国初の都道府県レベルのカスハラ防止条例

都道府県レベルでは、2025年4月に東京都が全国初の都道府県レベルでカスハラ防止条例を施行しました。

条例の特徴は、対象を労働者・事業者だけでなく「何人も」としている点です。住民・職員・取引先など、あらゆる立場の人がカスハラを行ってはならないと明記されています。

北海道・三重県も同様の取り組みを進めています。

市町村レベルの独自条例(牟岐町・綾部市)

市町村レベルでも、独自条例で踏み込んだ対策を打つ自治体が増えています。京都府綾部市は2025年4月、徳島県牟岐町は2025年10月に、それぞれカスハラから職員を守る独自の条例を施行しました。

ほかにも、佐賀市や豊明市は名札を「姓のみ」に変更し、松本市は「カスハラ対策室」を設置しました。このように法律施行を待たず職員を守る動きが全国に広がっています。

まとめ|公務員のカスハラは「組織で守る」時代へ

公務員のカスハラは、もはや個人の我慢で済む問題ではありません。地方公務員の被害経験率は民間の3倍を超え、どの職員にも無視できない深刻な水準です。

「全体の奉仕者」の法的位置づけ・窓口の独占性・情報の公開性が背景にあり、2026年10月の改正労働施策総合推進法でようやく対策が義務化されます。

押さえておくべき要点は次の3つです。

  • 公務員の窓口は「断れない・代替不可・公開性が高い」という構造的に被害が生まれやすい仕事である
  • 2026年10月施行の改正労働施策総合推進法で、全省庁・自治体に対策が義務化される
  • 東京都条例・市町村独自条例など、法律より先行して対策している自治体もある

カスハラは「我慢する個人の問題」から組織で守る社会課題へと変わりつつあります。利用できる制度と相談先を日頃から意識することが、公務員人生を健やかに歩む鍵です。

→公務員の休職制度や支援制度はこちら

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